西洋絵画からキリスト教をわかりやすく解説【新約聖書編】

西洋絵画から見るキリスト教

西洋で生まれた西洋絵画の多くは、キリスト教の影響を受けて描かれました。キリスト教は救い主イエス・キリストを信じる宗教ですが、新約聖書にはキリストの生涯が書かれています。西洋絵画を鑑賞することで、文章として長い新約聖書の物語を学ぶことができます。また新約聖書の物語を知っておくことで、西洋絵画をより深く理解して楽しんで見ることができるでしょう。
代表的な西洋絵画で、新約聖書の物語を読み解いてみましょう。


マッキー
Writer Profileマッキー

プロテスタント系のミッションスクールの高校を卒業後、2年間製造業に就く。ボランティアに参加したことをきっかけに介護職に転身。介護福祉士として20年以上、福祉に携わる。2019年にカメラマン養成講座にて学び、副業カメラマンとして活動。2022年に足の怪我をきっかけにライターに転身し、フォトライターとして活動中。趣味は猫カフェ巡り。殺処分される命があってはならないと、保護猫活動を行っています。

新約聖書とは?

新約聖書とは、キリスト教の聖典の一部です。旧約聖書と対になっており、新約聖書と旧約聖書をまとめて聖書と呼び、キリスト教の聖典としてその信仰の基盤となっています。新約聖書はイエス・キリストの生涯と教え、初代教会の歴史と信仰、神と人間との新しい契約を記した文書をまとめたものです。27の書は異なる著者や時代や目的によって書かれました。新約聖書はギリシャ語で書かれたものが原典とされていますが、多くの言語に翻訳されています。キリスト教徒は新約聖書から神の言葉を学び、信仰生活のためのヒントを多く得ています。

 

新約聖書が描くイエス・キリストの姿

新約聖書には、イエス・キリストの生涯と教えを伝える4つの福音書があります。それぞれが異なる視点から、イエス・キリストという存在を浮かび上がらせています。
マタイによる福音書は、イエス・キリストがユダヤ人の王メシアであることを強調しています。イエスの系図や幼少期の物語、山上の説教などが特徴的です。
マルコによる福音書は、イエス・キリストが神の子であることを証明するために、奇跡や権威的な言葉を多く記しています。イエス・キリストの人間性や苦悩も描かれており、最も古い福音書とされています。
ルカによる福音書は、イエス・キリストが全人類の救い主であることを示しています。イエス・キリストの誕生や幼年期に関する詳細な記述や、貧しい者や罪人、女性や異邦人に対するイエス・キリストの思いやりが際立っています。
ヨハネによる福音書は、イエス・キリストが神そのものであることを宣言しています。ヨハネの福音書におけるイエスの言葉には深い神秘性や象徴性があり、他の福音書とは異なる内容や順序が多く見られます。
四つの福音書は、それぞれが「私自身のイエス・キリスト」に出会う体験であり、私たちにも「あなた自身のイエス・キリスト」に出会うことを招いています。新約聖書が描くイエス・キリストの姿は、私たちの魂に響く言葉や生き方を示してくれるものでしょう。

 

「新約聖書」をモチーフにした絵画

キリスト教は392年にローマ帝国で国教化されました。496年にフランク王国のクロヴィス1世がキリスト教に改宗したことにより、西ヨーロッパにキリスト教が広まっていきました。
西ヨーロッパでは、5〜9世紀頃に読み書きができない人々にキリスト教の教えを伝えるために、聖書の物語を絵で表そうと、「目で見る聖書」としての宗教美術が肯定されて重要な役目を果たしました。礼拝が行われる聖堂内には、10〜15世紀頃に旧約・新約聖書の物語や使徒たちの伝承など、キリスト教の信仰を表現する宗教美術が飾られていったのです。
ここからは実際に「新約聖書」をモチーフにした絵画を見ていきましょう。

「受胎告知」

聖書箇所:ルカによる福音書1章

レオナルド・ダ・ヴィンチ作「受胎告知」
レオナルド・ダ・ヴィンチ作「受胎告知」
Leonardo da Vinci, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

キリスト教の受胎告知とは、イエス・キリストの母であるマリアが、神の使いである大天使ガブリエルから、聖霊によって子を宿すことを告げられた出来事のことです。この出来事は、新約聖書のルカによる福音書とマタイによる福音書に記されています。受胎告知は、キリスト教の教義である処女懐胎の根拠となっています。また、イエス・キリストが神の子であることを示す重要な証とされています。受胎告知は、キリスト教(主にカトリック)における祝日の一つにもなっていて、キリスト教美術や音楽にも多く取り上げられており、多くの芸術家がこの場面を表現しています。

「キリストの降誕」

聖書箇所:ルカによる福音書2章

ピエロ・デラ・フランチェスカ作「キリストの降誕」
ピエロ・デラ・フランチェスカ作「キリストの降誕」

イエス・キリストが生まれたシーンを描いた絵です。キリスト教では、神の子であるキリストが人間の姿で現れて、人類の罪を償うために十字架にかけられたと信じられています。
キリストの降誕は、新約聖書のマタイによる福音書とルカによる福音書に書かれていますが、正確な日付は不明です。現在のクリスマスは「イエス・キリストが生まれた日」ではなく、「イエス・キリストが誕生したことを祝う日」となっています。
キリスト教系の幼稚園や教会の子供会では、クリスマスにキリストの降誕を描いた降誕劇が演じられています。降誕劇は中世から行われていて、神秘劇と呼ばれる宗教劇の一種です。降誕劇では新約聖書の記述に基づいて演じられているため、このキリスト降誕はキリスト教徒にとってはおなじみのシーンと言えます。

「最後の晩餐」

聖書箇所:マタイによる福音書26章・マルコによる福音書14章
ルカによる福音書22章・ヨハネによる福音書13章

レオナルド・ダ・ヴィンチ作「最後の晩餐」 
レオナルド・ダ・ヴィンチ作「最後の晩餐」 

最後の晩餐とは、イエス・キリストが十字架にかけられる前日に、十二使徒とともに行った食事のことです。この食事はユダヤ教の過越祭の儀式と重なっており、イエスはパンとぶどう酒を使って自分の体と血を象徴する聖餐を初めて行いました。
また、イエスは自分を裏切る者がいることを予言し、ペテロが自分を三度否定することも告げました。最後の晩餐はキリスト教の重要な出来事であり、多くの芸術作品や文学作品に影響を与えています。

「ゲッセネマの祈り」

聖書箇所:マタイによる福音書26章・マルコによる福音書14章・ルカによる福音書22章

アンドレア・マンテーニャ作「ゲッセマネの祈り」
アンドレア・マンテーニャ作「ゲッセマネの祈り」
Andrea Mantegna, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

ゲッセネマの祈りとは、イエス・キリストが十字架にかけられる前夜にオリーブ山の麓にあるゲッセネマの園で祈った祈りです。この祈りは、イエスが自分の運命に苦悩しながらも、父なる神の御心を受け入れる姿勢を示したもので、キリスト教では重要な場面とされています。

イエスはこの祈りの中で、「父よ、あなたにはすべてのことがおできになります。この杯をわたしから取り除いてください。それでも、わたしの望むことではなく、あなたの望まれることを」と言っています。「この杯」とは、神から与えられた「飲み干さねばならないもの」(使命)という意味で、旧約聖書ではしばしば神のさばきや憤りの象徴として使われています。
イエスは自分に定められている受難の運命を取り除いてほしいと祈りましたが、最終的には父なる神の計画に従うことを決断します。

「キリストの磔刑」

聖書箇所:マタイによる福音書27章・マルコによる福音書15章
ルカによる福音書23章・ヨハネによる福音書19章

アンドレア・マンテーニャ作「キリストの磔刑」
アンドレア・マンテーニャ作「キリストの磔刑」

十字架刑はイエス・キリストがローマ帝国の支配下でユダヤ人の指導者たちによって告発され、ローマ総督ポンテオ・ピラトによって死刑判決を受け、ゴルゴタの丘で十字架につけられて死亡した出来事のことです。

キリスト教の教義においては、この磔刑によってイエスは人類の罪を贖い、神と人との和解を成し遂げたと信じられています。また、この磔刑はイエスの復活とともに、キリスト教の信仰の中心的な出来事であると言えます。

「キリストの復活」

聖書箇所:マタイによる福音書28章・マルコによる福音書16章
ルカによる福音書24章・ヨハネによる福音書20書

シモン・チェホヴィッチ作 「復活」
シモン・チェホヴィッチ作「復活」

キリストの復活は、キリスト教の信仰の中心で、イエス・キリストが死後に生き返ったという教義です。キリストの復活は、新約聖書の四福音書や使徒行伝などに詳しく記されており、キリスト教の神学や礼拝に大きな影響を与えています。
キリストの復活は、神の愛と権威の証明であり、人類の罪と死の解決を示しています。また、キリストの復活は、永遠の命への希望をもたらすとされています。キリスト教徒にとって、キリストの復活を祝うイースターは最も重要な祭りであると言えるでしょう。

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まとめ

キリスト教はまずローマからヨーロッパに普及しました。それに伴い、以上のように、西洋絵画に大きな影響を与えています。その絵画が「目で見る聖書」となり、キリスト教が世界に普及する一助となりました。
キリスト教の教えや聖書の物語は、絵画や彫刻、音楽や文学などのさまざまな分野で表現されています。美術や建築のスタイルや技法は今でも活かされています。
例えば、中世のゴシック様式は、キリスト教の神秘主義や天国への憧れを反映しています。また、ルネサンス期には、キリスト教と古典文化が融合し、人間中心主義や自然主義が芸術に取り入れられてきました。

近代以降には、キリスト教の影響を受けた芸術は社会や政治の変化に対応して、新しい芸術運動や表現方法を生み出しました。印象派や表現主義、シュルレアリスムなどの芸術家たちは、キリスト教の伝統的なイメージを破壊したり、変容させたりしました。
また、現代ではキリスト教は多様化した文化や宗教と対話したり、批判したりすることで、芸術文化に新たな刺激を与えています。これらのことから、キリスト教は今日もなお、芸術文化において重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

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