教会暦とは?聖書の記事を辿るキリスト教独自の暦を解説

教会暦とは?

教会暦(きょうかいれき)とはキリスト教会で用いられる暦(こよみ)のことです。日本にもっとも浸透している教会暦の一つはクリスマスでしょう。近年ではイースターも商業イベントとして広まりつつありますね。キリスト教は世界中に広まったため、各国の土着信仰の影響を受けているイベントも多々あります。中には、聖書的でないものも含まれていますし、すべての教会がこの教会暦を取り入れているわけではありませんが、今回は、キリスト教文化圏の社会風習や祝日などの紹介も交えつつ、教会暦について解説します。


都倉
Writer Profile都倉

ライター/編集者、時々漫画家。プロテスタント系の高校を卒業後に渡米。さまざまなマイノリティが住むニューヨークに滞在した経験から、差別や貧困・格差などの社会問題に関心を持つようになり、現在の活動の軸となっている。帰国後ずいぶん経ってから再び教会へ行くようになり、2022年のクリスマスに受洗。好きなものは大型犬。

 

教会暦とは?

古今東西、暦を持たない民族は存在しません。暦は古来より社会生活を営む上でなくてはならないものでした。特に農耕や狩猟が生活の要となっていた時代は、太陽や星の動きがより重要な意味を持っていたのです。
単に生活上の出来事だけではなく、暦は民族間に継承される祝祭と切っても切り離せません。現代の日本でも、季節の節目である「五節句」を祝う雛祭りや七夕祭りなど、暦に応じてさまざまなイベントが行われますね。

古代ユダヤ民族も同様に、神の出来事を暦に刻み、記念しました。
キリスト教の暦はユダヤ教の暦を受け継いでおり、たとえばイースターはユダヤ教の過越祭をキリスト教の教義のなかで捉え直したものです。時代を経てキリスト教が広まり、さまざまな文化と交わっていくうちに、土着の風習を取り入れていった例もあります。

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そうして、1年のサイクルの中に、聖書の重要な出来事を割り振ってできあがっていったのが教会暦です。イエス・キリストの降誕を祝うクリスマスや復活を祝うイースターなど、特定の祝祭日が定められ、それに連動して1年がいくつかの「節」に分けられています。教会によっては、この教会暦に従って特定の聖書箇所を朗読し、礼拝を執り行います。

日曜日を主日とし、7日間を1週間としてカウントするのがキリスト教の暦であることをご存知の方は多いでしょう。日本のプロテスタント教会では、毎週日曜日の主日礼拝を守るとともに、三大記念日であるクリスマス、イースター、ペンテコステを祝うことが一般的です。

プロテスタント教会の主な教会暦

待降節(降臨節・アドベント)降誕日前の第4日曜日から降誕日まで
2024年:12月1日〜12月24日
2025年:11月30日〜12月24日
降誕日(クリスマス)12月25日
2024年、2025年:12月25日
降誕節降誕日から公現日の前日までの期間
2024年、2025年:12月25日~1月5日
公現日(栄光祭)1月6日(クリスマスの12日後)
2024年、2025年:1月6日
公現節公現日から受難節の前の火曜日まで
2024年:1月6日~2月13日
2025年:1月6日~3月4日
灰の水曜日受難節が始まる最初の水曜日
2024年:2月14日、2025年:3月5日
四旬節(受難節・レント)イースター前の6週間
2024年:2月14日~3月30日
2025年:3月5日〜4月19日
棕梠の主日イースター前の日曜日
2024年:3月24日、2025年:4月13日
受難週イースター前の一週間
2024年:3月24日~3月30日
2025年:4月13日〜4月19日
洗足木曜日受難週の木曜日
2024年:3月28日、2025年:4月17日
受難日受難週の金曜日
2024年:3月29日、2025年:4月18日
復活日(イースター)春分の日の後の満月の日の後にくる最初の日曜日
2024年:3月31日、2025年:4月20日
復活節復活日から聖霊降臨日までの50日間
2024年:3月31日~5月18日
2025年:4月20日~6月7日
昇天日イースターから40日目の木曜日
2024年:5月9日、2025年:5月29日
聖霊降臨日(ペンテコステ)イースターから50日目の日曜日
2024年:5月19日、2025年:6月8日
聖霊降臨節(三位一体節)聖霊降臨日から待降節までの期間
2024年:5月19日~11月30日
2025年:6月8日~11月29日
三位一体主日ペンテコステから一週間後の日曜日
2024年:5月26日、2025年:6月15日

例えば、2024年1月7日の日曜日であれば「公現節 第一週主日」、1月14日であれば「公現節 第二週主日」となります。

典礼色

教会暦の節・祝日にはそれぞれ色が定められています。
礼拝に行く機会があったら、ぜひこの色に注目してみてください。牧師のストールや祭壇や説教壇のテーブルクロス、聖壇に飾る花の色などに、典礼色が取り入れられています

典礼色の使用イメージ

待降節紫または青
降誕節
公現節
受難節
聖金曜日
復活節
聖霊降臨日
聖霊降臨節
(三位一体節)
赤または緑

※典礼色にこだわらない教会も中にはあります。
それぞれの教会暦について、詳しく見ていきましょう。

 

待降節(アドヴェント)

イエス・キリストの降誕を待ち望む期間で、12月25日(クリスマス)の4週間前の日曜日からクリスマス・イブまでが待降節に当たります。教会暦上は待降節からが一年の始まりとされます。
アドヴェントの過ごし方は世界中さまざまです。礼拝では特定の聖書の箇所を朗読するのが習わしとなっており、クリスマスの記事がよく読まれます。

アドヴェントの風習

●アドヴェント・カレンダー

日本のお店でも、クリスマスの時期にアドヴェント・カレンダーを見かけるようになりました。これはクリスマスまでの日数を数えるために用いるもので、ドイツのルター派教会で19世紀初頭から始まったとされています。「アドヴェント」とはラテン語の「アドヴェントゥス(到来)」に由来する言葉です。

●アドヴェント・クランツ

教会に飾られたクランツ
教会に飾られたクランツ。撮影:筆者

円形に立てた4本の蝋燭をクリスマス前4週間の日曜日に1本ずつ灯していき、クリスマスを待ちわびます。4本のキャンドルそれぞれに意味があり、1本目は「希望」、2本目は「平和」、3本目は「喜び」、4本目は「愛」を指します。基本的に蝋燭の色は典礼色の紫か青を用います。真ん中にイエス・キリストを表す白い蝋燭を立てることもあります。
紫色の蝋燭は、クリスマス当日にすべて白に変わります。

●プレゼーぺ(プレセビオ、ネイティビティ)

ナポリのプレゼーぺ
ナポリのプレゼーぺ
Sailko, CC BY 3.0 , via Wikimedia Commons

イタリアでは、クリスマスシーズンになると、イエス・キリストの生誕の場面を模した「プレゼーぺ」という模型が各地に飾られます。はじめに等身大のプレゼーぺを作ったのはアッシジのサンフランチェスコだと言われています。
プレゼーペは特にナポリ地方で発展を遂げ、微に入り細を穿ったものが作られるようになりました。農民や職人といった庶民たちも登場し、イエスが“小さくされた”身分の低い人たちの只中に生まれたことを思い起こさせます。

 

降誕節

12月25日のクリスマスから、1月6日の公現日(エピファニー)までの期間を降誕節と呼びます。

クリスマス

原始キリスト教会ではクリスマスは祝われていませんでした。クリスマスが祝われるようになったのは4世紀になってからです。
ところで、イエス・キリストの誕生日は聖書に記述がありません。なぜ12月25日に降誕祭の日付が定められたのかは諸説ありますが、冬至近くにローマで行われていた太陽神の祭りをキリスト教化したと考えられています。

クリスマス付近の冬至を境に徐々に日が伸びていくことから、冬が長い北欧や北ヨーロッパにおいては、とりわけ喜ばしい期間でもあります。クリスマスは、キリストという希望の光が世に現れたことを記念する日なのです。

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降誕節の風習

●クリスマスツリー

クリスマスツリーはドイツが由来です。森に住んでいたゲルマンやケルト系民族の巨木信仰が由来だと考えられています。プロテスタント教会が最初に取り入れ、後にカトリック教会にも取り入れられました。
キリスト教文化圏では、エピファニーの1月6日までツリーが飾られています。

 

公現節

1月6日のエピファニーから、受難節までの期間を公現節と呼びます。

公現祭(エピファニー)

公現祭は異邦人への救い主の顕現を祝う日で、ギリシャ語の「エピファネイア(顕現)」に由来します。クリスマスから12日後の1月6日がエピファニーに当たります。
西方教会においては、東方の三博士がエルサレムにやってきて幼子イエスに出会った出来事と結びつけられています。

●各国のエピファニー

ガレット・デ・ロワイタリアでは公現日に「エピファニア」という、良い子にはプレゼントを贈り悪い子には炭を贈るという一風変わった独自のお祭りが行われたり、フランスでは「ガレット・デ・ロワ」というお菓子を食べる風習があったりと、国によって独自の文化が発展しています。

 

受難節

受難節はイエス・キリストの受難を記念して礼拝を守る期間です。レント、四旬節などの呼び方もあります。
イースターの6週間前の日曜日の前の水曜日から受難節が始まります。古代の教会では、洗礼は年に一度、復活祭の日のみに行うとされていたため、受洗の準備期間としても大切にされていました。受難節はイエスの十字架の苦しみに参与して自身の信仰を省みる時でもあり、節制して静かな気持ちで過ごします。
受難節の最後の一週間を「受難週」と呼びます。イエスが十字架にかけられた金曜日に受難曲を演奏することもあります。

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灰の水曜日

受難節イメージ受難節は「灰の水曜日」から始まります。人間は塵に過ぎず死んだら灰になることを思い起こし、教会によっては額に灰で十字をつける風習などがあります。

棕櫚の主日

棕櫚(シュロ)の主日とは、受難週最後の日曜日のことです。
イエス・キリストが子ロバに乗ってエルサレムに入場したとき、人々はシュロの葉を振って、新しい指導者の登場を喜び歓迎しました。しかし、それからわずか4日後にイエスは捉えられ、十字架にかけられました。エルサレム入場の時にイエスを歓迎していた民衆たちは、打って変わってイエスを裏切り十字架につけたのです。
イエスは間もなく自分の身に起こることをよく理解していました。そのうえでエルサレムの門をくぐり、受難への道を選んでくださったことを覚える聖日です。教会によっては、この日曜日に実際シュロの葉を飾ることもあります。

洗足の木曜日・聖金曜日

洗足の木曜日(聖木曜日)はイエスが捉えられる直前に、弟子たちの足を洗われたことを覚える日、また聖金曜日はイエスが十字架にかけられた金曜日です。聖木曜日または聖金曜日の夜に、聖餐式を行う教会もあります。

 

復活節

イースターの日曜日につづく7週間が復活節です。
イースターは、イエス・キリストが十字架で亡くなった後、三日目に復活した出来事を記念する日で、キリスト教ではもっとも重要な祝祭日です。イースターは移動祝祭日で、「春分の日の直後の満月の次の日曜日」と決められています。
新約聖書を読むと、ちょうどユダヤ教の過越祭(パスカ・ペサハ)の時期にイエスの十字架と復活の出来事があったことがわかります。

あなたがたが知っているとおり、ふつかの後には過越の祭になるが、人の子は十字架につけられるために引き渡される。
(マタイによる福音書 26:02)

さて、除酵祭の第一日に、弟子たちはイエスのもとにきて言った、「過越の食事をなさるために、わたしたちはどこに用意をしたらよいでしょうか」。イエスは言われた、「市内にはいり、かねて話してある人の所に行って言いなさい、『先生が、わたしの時が近づいた、あなたの家で弟子たちと一緒に過越を守ろうと、言っておられます』」。弟子たちはイエスが命じられたとおりにして、過越の用意をした。
(マタイによる福音書 26:17-19)

過越祭とは、イスラエル人が隷属から解放され、エジプトを脱出したことを記念する日です。キリスト教では、「エジプトからの解放」という出来事は、イエス・キリストによる「罪と死からの解放」を表すとしています。

復活節の風習

●イースターエッグ

イースターエッグイースターの風習として日本人にも馴染み深いイースターエッグ。殻を破ってヒヨコが生まれるイメージに、キリストの復活を重ね合わせたものと考えられています。イースターを祝って、イースターエッグを配る教会も少なくありません。

 

聖霊降臨節

聖霊降臨祭は「ペンテコステ」と呼ばれ、クリスマス、イースターとともに大きな祝日です。
ペンテコステとは、ギリシャ語で「50」の意味。イースターから数えて50日目のことを指します。1週間を7日と考え、7回繰り返すと50日目となります。
ユダヤ教では、過越の祭から50日目に、モーセを通して律法を授かったことを記念する「五旬祭」を祝いました。使徒行伝(使徒言行録)には、五旬祭の日、十二使徒たちのもとに聖霊が降臨するという出来事が書かれています。

五旬節の日がきて、みんなの者が一緒に集まっていると、突然、激しい風が吹いてきたような音が天から起ってきて、一同がすわっていた家いっぱいに響きわたった。また、舌のようなものが、炎のように分れて現れ、ひとりびとりの上にとどまった。すると、一同は聖霊に満たされ、御霊が語らせるままに、いろいろの他国の言葉で語り出した。
(使徒行伝 2:2-4)

この聖霊降誕の出来事をきっかけに、使徒たちが自覚的に教会の働きを始めたことから、ペンテコステは「教会の誕生日」として重要な日と位置づけられています。
聖霊降臨節は三位一体節とも呼ばれ、ペンテコステから待降節までの約半年間つづきます。

 

まとめ

聖書の出来事を記念する教会暦は、キリスト教文化圏の社会的風習にも深く関わっています。ここでご紹介した以外にも世界各地に独自の風習が存在します。世界宗教ならではの豊かさですね。
教会暦を知ることで、聖書や民族が辿ってきた歴史の理解も深まります。教会を訪れる機会があれば、ぜひ暦にも注目してみてくださいね。


参考文献:
『よくわかるキリスト教の暦』今橋朗・著(キリスト新聞社)
『教会暦 祝祭日の歴史と現在』K.-H.ビーリッツ・著、松山與志雄・訳(教文館)

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