カレンの人々と聖書

カレンの人々

新生宣教団ではこれまでに、ミッションパートナーと協力して多くのスゴーカレン(スコーカレン)語の聖書を送り出してきました。
スゴーカレン語はミャンマーの少数民族集団カレンの一部で用いられる言語です。
今回はミッションパートナーのレポートをもとに、スゴーカレン語の聖書の必要性についてご紹介します。
(※このテキストは2020年のもののため、クーデターが発生した現在では、さらに状況が悪化している可能性が高いです)

 

カレンの人々について

カレンの家ビルマとタイに暮らしているカレンの歴史は長く複雑です。私たちが「カレン」と呼んでいるのは、実際には20以上の民族グループの集まりであり、そのうち最も多いのが「スコー語」、「スゴーカレン語」と「ポーカレン語」を話す人々です。
イギリス人が300年近く前に、のちのビルマとされる地域に到着したとき、彼らは意図的に少数民族のグループをまとめようとしました。そこから「カレン」というアイデンティティが形成され始めました。
カレンは民族的結束の形成と同時にキリスト教が導入されたため、キリスト教はカレンの伝統の一部とされています。 実際キリスト教は、散在するさまざまなカレングループを団結させるための結束と知識を提供したと言えます。

 

待ち望んでいた真の神

カレンの人々には古くから、東南アジアの多くの部族と同様に、全知全能で、遍在する真の神について教えた黄金の知恵の書を与えられた」という言い伝えがありました。
しかし、彼らはこの「黄金の知恵の書」を失ってしまいました。伝承によれば、「海の向こうの白人の兄弟がこの黄金の本を持っていて、いつの日かこの知恵がカレンに戻ってくる」。さらに、「真の神が戻ってきてカレンと人類を罪と悪霊から救う」ということを信じ待っていました。

キリスト教が伝わる1500年前からその地域に根付いていた仏教は、イギリス人がビルマに到着するまでに、伝統的な精霊信仰(アニミスト)と混ざり合って、一種の「ハイブリッド仏教」を形成していました。
この仏教は一部のカレンの間で、黄金の知恵と救いの書の返還という約束の成就と見なされていましたが、他のカレンは、1830年代に西洋の宣教師がもたらした聖書とイエス・キリストの福音こそが、この伝承の約束の成就であると信じて受け入れました。決定的なポイントとなったのは、「神の言葉である聖書が、彼らを罪と悪霊の恐怖と束縛から解放する」という、キリスト教の核となる部分と合致していた点でした。

 

カレンの苦難の歴史

カレンの地図ミャンマーは、周囲の国々と同様に、多くの少数民族で構成されている国です。ミャンマーの人口の3分の1以上が少数民族に属しており、これらの少数民族の中で、少なくとも100の異なる言語が話されています。
1824年から1942年までの125年にわたって、ビルマ(ミャンマー)はイギリス人によって植民地化のための戦争と、その後イギリスの植民地として統治されるという歴史を負ってきました。その間、多くの少数民族がイギリスの同盟国となり、イギリスを支持しました。これにより、多数派民族であったビルマ族はこれらの少数民族をイギリスの「忠誠者」と見なして軽蔑しはじめました。
カレンは、ほぼ1世紀の間イギリスと同盟を結び、第二次世界大戦中に侵略してきてビルマを植民地化した日本に対して、イギリスと共に戦ったグループの1つでした。
西側諸国と同盟を結んでいた東南アジアの多くの少数民族グループ(たとえばベトナムやラオスのモン族とクム族)は、第二次世界大戦後に植民地支配から独立すると、新しい国家によって不利な立場に立たされました。カレンもまた、1948年にビルマがイギリスから独立したのち、不利な立場に立たされたマイノリティグループの1つでした。

イギリスから独立したビルマが1940年代後半に形作られ始めたとき、カレンはまず先住民グループとして、次に独立したカレン国家として、そして最後にはビルマ内の自治連邦地域として、自分たちのアイデンティティーのために戦い始めました。この戦いは最初は政治のテーブルの周りで起こりましたが、すぐに権威主義的な軍事政権に対する軍事反乱に変わりました。この反乱は過去60年間のほとんどの期間で行われ今日まで続いており、双方による残虐行為が発生しています。

 

2重の苦難の中にあるカレン

カレン語聖書これら何十年にもわたる軍事反乱によって、ミャンマーとタイの国境付近には大規模なカレン難民が生まれました。
仏教国であるミャンマーでは、キリスト教徒に対して定期的に宗教的違反者として迫害が発生しているため、キリスト教徒の多いカレンは、反乱軍とキリスト教徒という二重の理由により、現在も激しい迫害を受けています。
多くのカレンが、何十年にもわたる闘争の只中で捕らえられています。この二重に困難な窮状にありながら、多くのカレンがイエス・キリストを真に求めています。
迫害されたカレンの人々のために、多くの宣教団体が避難所や保護施設を備え、また聖書を求める人々に聖書と必要な物資を送り届ける活動を行っています。

 

待ち望まれた聖書

カレンの人々は聖書が無い中でも長年にわたって自分たちの信仰を保ち、そして聖書を求めてきました。2020年に聖書を受け取った二人の人の証をご紹介します。
(※証は2020年に書かれたものです)

カレンの牧師

聖書をありがとう

私の名前はS。牧師で、私の故郷のK村で牧師をしています。
私たちの村には567の家族がいて、その全員がキリスト教徒ですが、私たちの村にある聖書は1971年に購入されたたった一冊だけでした。(下の写真)
私は1984年に自分の村で牧会を始めましたが、今日まで自分の聖書を持っていませんでした。今日、私と村の人々は一家に一冊ずつ、無料で聖書を受け取りました。とても幸せです。
村に一冊だけあった聖書
都市から遠く離れた村に住む人々は、収入がないため、聖書を購入して所有することは非常に困難です。彼らはただの農民で、食べる分の米しか持っていません。いくつかの村は孤立しており、これらの地域での内戦のために政府の手も届いていません。そのため道路はなく、ほとんどの村は川だけを頼りに近隣の村を行き来しています。車は夏季にのみ、しかも一部の村にしかたどり着けません。
私の教会のメンバーは神の言葉に飢えていて、自分の聖書を手に入れたいと思っていましたが、特にスゴーカレン語の聖書は村の人々にとって非常に高価であるため、手に入れることはできませんでした。
彼らが一日中働いても、たった1500チャット(約1ドル)しか手に入りません。それでも彼らには家族がいて、子どもたちを学校に行かせる必要がありました。

私たちの教会で聖書を受け取ってから1か月が経ちましたが、大きな変化がありました。
新型コロナウイルスのために教会に集まることはできませんが、人々は一緒に聖書を読み、一緒に祈り、歌い、定期的に家族の祈祷会を開いています。
教会員は聖書を読み、お互いをますます愛するようになっています。何人かのメンバーが私のところに来て、聖書からの質問について私に尋ねます。これらは、人々が聖書を受け取った後の大きな変化を示しています。スゴーカレン聖書を私たちの教会に無料で与えてくださって、本当に感謝します。
あなたは最高の場所に種をまきました。私たちの祈りは、あなたがまいた種を育て、私たちの村や、知人の牧師やその友人たちがいるスゴーカレンの他の村で多くの実を結ぶことです。

 

カレン語聖書

私にとって最も貴重で祝福された日

私の名前はRです。78歳です。私は70歳になるまでN村の牧師でしたが、現在は引退しています。
私は聖書なしで48年間牧会しました。新約聖書のすべての本、詩篇、箴言、イザヤ、エレミヤ、ダニエル、エゼキエルの本を手で書き写しました。これが、48年間の私の聖書となりました。

スゴーカレンの讃美歌付き聖書を無料で受け取った今日は、私にとって最も貴重で祝福された日です。
もう本当に驚くべき……信じられないほど!
今、私の右目は見えませんが、左目はまだ見えます。ですから「主よ、私がこの聖書を最初から最後まで読む前に、そして私がすべての賛美歌を歌う前に、私の命を奪わないでください」と祈っています。私は神が私の祈りを聞いてくださり、聖書全体を読み、すべての賛美歌を歌うことができると強く信じています。

私たちスゴーカレンの人々は、あなたを通して(聖書を通して)最も貴重な祝福を受けました。私たちは罪人ですが、神はカレンの人々を愛しておられます。主をたたえます。私たち村の人々はとても貧しく、ほとんどのカレン族は戦闘のため、また彼らの生活のために散らされています。彼らはすべての土地、財産、両親、親戚、兄弟、姉妹を失ったので、心に痛みを感じています。聖書は彼らの心の痛みを治すために最適です。
一部の人々は酒におぼれ、薬物に逃げ、あるいは喫煙などによって心の痛みを紛らわそうとしました。
しかし私たちの地域の、聖書を受け取った16の村の16人の牧師から聞いた話では、村の人々は聖書を読んで、これらの邪悪な行いから遠ざかり、神を賛美する教会に来ました。農場で一生懸命働き始め、家族の団結に向けて働きはじめました。これらの大きな変化はすべて、あなたが彼らに無料で配布した聖書を読んだために起こりました。あなたはそれらの人々のために素晴らしい事をされました。あなたの行いは主の目には素晴らしいことで、天ではあなたのために報いがあるでしょう。村でまだ聖書を持っていないスゴーカレンの人々を覚えてください。
神様のお恵みがありますように。

 

スゴーカレン語の聖書を印刷できる恵み

スゴーカレン語聖書私たち日本人にとっては、聖書はそこまで珍しいものでもありがたいものでもありませんが、カレンの人々にとっては、長い苦難の歴史の中で何十年も心の支えとして待ち望んでいたものであり、そればかりか、古くから伝えられてきた「黄金の知恵の書」でもあるということを知り驚きました。
そのような貴重な希望の聖書を、遠く離れた日本の、他でもない新生宣教団で印刷できることを感謝します。
これらの聖書をできる限り安いコストで印刷し、ミッションパートナーに提供するために皆様のご支援を必要としています。
どうぞこの働きを覚えてお祈りください。

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新生宣教団はキリスト教超教派の団体として、1954年に「新生運動協力会」として設立されて以来、児童伝道、放送伝道、文書伝道などを行ってきました。今ではこれらの活動は文書伝道(印刷)に集約されています。
いつの時代も聖書を求める声がなくなることはなく、私たちはそんな切なる求めに応えるべく、国内外のミッションパートナーと協力して力を尽くしています。
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